夏の風物詩というと花火ですよね。
大空に咲く大輪の花火。
仲間たちとはしゃぎながらする手持ち花火。
どちらも楽しいものです。
でも、どうして花火をするのは夏ばかりなのでしょうか?
日本では冬になると花火を見る機会はがくんと少なくなります。
花火大会なんか人気のあるイベントなので年中やってもいい気がしますよね。
今回は花火が夏に打ち上げられる理由について解説します。
冬の花火のメリット・デメリットや冬花火が見られるスポットについても紹介していますよ。
慰霊の意味があるから
夏の花火大会はお盆の時期に開催されることが多いですよね。
それはお盆の迎え火・送り火のように、花火にもお供えや鎮魂の願いが込められているものが少なくないからです。
また古来から日本では火を魔除けや身を清めるおまじないにも使われてきました。
火打ち石をカチカチして主人を見送るシーンは時代劇でよく目にします。
火を特別視する日本人にとっては、花火も単なるイベントではなく慰霊の意味を込めやすかったんでしょうね。
★隅田川花火大会は江戸時代の飢饉の慰霊
1732年、日本では大飢饉に疫病の流行も重なって多くの人が亡くなりました。
そこで将軍・徳川吉宗が、死者の霊を癒すことと悪霊退散の願いを込めて隅田川の川開きにお祭りを催しました。
そのお祭りで花火を上げられるようになったのが両国の川開き。
この両国の川開きが、東京の隅田川花火大会の起源となっています。
隅田川の花火はテレビ中継もされるので有名ですよね。
★長岡まつり大花火大会は戦没者の慰霊
新潟県長岡市で1946年から始まったのが長岡復興祭。
空襲で亡くなった人への慰霊と戦後の復興を願って開催されたお祭りで、いまでは長岡まつりと名前が変わって毎年続いています。
日本三大花火大会に数えられるくらい大規模な花火大会です。
★浅川の花火は一揆騒動の犠牲者慰霊が元
浅川の花火は福島県でもっとも古い歴史ある花火大会です。
浅川の花火は、寺花火とも言われており、古くから僧侶による供養が行われていました。現在でも花火打ち上げの前には、花火起源の一つである一揆騒動説の首謀者が処刑された「弘法山公園」において、神仏混交の慰霊祭が粛々と執り行われ、この地で起こった一揆騒動の犠牲者や古くは戊辰戦争、日清、日露、太平洋戦争の戦没者の供養を行っています。
★熊野大花火大会の起源は初精霊供養
三重県熊野市の海岸沿いで行われるのが熊野大花火大会です。
三百余年の伝統を誇る、熊野大花火大会の起源は、お盆の初精霊供養に簡単な花火を打ち上げ、その花火の火の粉で灯籠焼を行ったのが始まりといわれています。
時代とともに花火の規模が拡大しても本来の目的である初精霊供養の要素は消える事が無く、現在の花火大会でも、初精霊供養の灯籠焼きや追善供養の打ち上げ花火などがプログラムに組み込まれています。
とこのように、古くから開催されている花火大会の歴史をひもとくと慰霊祭が起源になっていることが多いです。
やはり慰霊となると、ご先祖様が帰ってくるお盆の開催が中心になります。
逆に比較的新しい花火大会は「不景気をふっとばせ」「子供たちに笑顔を」という目的で始まったものが多いですね。
人が集まりやすいから
打ち上げ花火は視界の開けた場所でないと見ることができません。
でもそういう場所は夜になると結構寒いですよね?
日中ポカポカ陽気の季節でも日が落ちると気温はぐっと下がります。
快適に花火を見ることができるのはやっぱり真夏が一番です。
花火大会は町を上げての一大イベントです。
たくさんの人手を見込んで大きな予算が使われます。
それだけに、集客を考えると夏以外で開催するのは効率が悪いんですね。
台風直撃・他の花火大会と日程がかぶる、などのリスクを考慮しても真夏に開催するのが一番いいという考えでしょう。
花火の製造期間のため
花火大会に使われるような大型の打ち上げ花火は、作るのに手間も時間もかかります。
ジメジメとした夏や雨の多い梅雨は花火作りには大敵です。
なので花火製造は空気が乾燥する冬から始まります。
冬スタートなら年明けや春先には完成しそうですが、花火は作って終わりというわけではありません。
花火大会に合わせたプログラム作り・新作花火のテスト・工場の安全検査などが行われます。
ようやくお披露目となるのがちょうど梅雨明けの時期というわけです。
夏に打ち上がるのは花火の製造スケジュールからしても理にかなっているんですね。
花火制作についてはこちらのサイトを参考にさせていただきました。
冬の花火は危険?
冬に花火が少ないのは危険防止の意味もあります。
乾燥した冬は何でもよく燃えます。
空気中の水分が少ないので火が自然に消えにくいからです。
なので大きな火災は冬場のほうが多いですよね。
外国でも乾季になると大規模な山火事が発生したりします。
夏には空中で消えてしまう花火の火の粉も、冬の乾燥した空気では地面まで届くかもしれません。
冬の地面には枯れ葉・枯れ木など燃えやすいものが多いです。
そこから燃え広がって火事になることは十分考えられますね。
また静電気が起こりやすいのも冬のデメリットです。
大きな花火でもっとも神経を使うのが打ち上げ前の管理。
夏には心配のない静電気という火気があるので、冬に仕事をする花火職人にはひときわ高い技術が求められることになります。
冬花火にもメリットあり
ですが冬の花火もデメリットばかりではありません。
夏にはないいいところがあるんですよ。
冬の花火は難しいだけで禁止というわけではありません。
乾燥した空気では視界がクリアになります。
夏よりも冬の星空のほうがくっきりキレイに見えるのはそのためです。
当然遠くから眺める打ち上げ花火もよりはっきり目に写ります。
鮮やかな色合いと美しい形を堪能することができます。
また、燃えやすい空気は花火の燃焼を激しくします。
なので手持ち花火の火も派手になりますね。
線香花火のような小さな花火だと結構違いがわかります。
夏とは違う太く短い火花を見ることができますよ。
※火の扱いには十分注意してくださいね。
冬に開催される花火大会
実は冬に打ち上げられる花火も意外にあります。
花火大会と銘打っているものは少ないですが、規模的には夏のイベントにも引けを取りません。
澄んだ空気に広がる花火は一見の価値がありますよ。
【12月】お台場レインボー花火
クリスマスのイルミネーションとともに楽しめる東京お台場の花火です。
12月の土曜日に毎週打ち上げられますよ。
【カウントダウン】TDL ニューイヤーズ・イヴ
冬の花火でぱっと思いつくのが東京ディズニーランドのカウントダウン花火ではないでしょうか?
チケットは抽選でなかなか手に入りませんが一度は夢の国で年を越してみたいですね。
動画では4分過ぎからカウントダウンが始まります。
画面で見るだけでも興奮しますよ。
【カウントダウン】門司港レトロカウントダウン
福岡県北九州市の門司区で開催されるカウントダウンイベントです。
年末には周辺がイルミネーションで美しく飾られますが、カウントダウン直前には消灯します。
年明けとともにまばゆい花火が打ち上がりますよ。
【年明け】花火の里あさかわ 元朝参り 除夜の花火
慰霊の花火大会として紹介した浅川町では、年明けとともに108発の花火が打ち上げられます。
ジャパニーズカウントダウンというか、除夜の鐘ならぬ除夜の花火ですね。
探してみると除夜の花火は各地で行われていますよ。
【2月】函館海上冬花火
雪で覆われた2月の函館の夜景。
ただでさえ美しい景色を大輪の花火がさらに彩ります。
開催期間は3日あるので目にするチャンスは多そうです。
【12月】秩父夜祭 花火大会
ユネスコ無形文化遺産にも登録された300年の歴史を持つ秩父夜祭。
毎年12月2日と3日に花火が打ち上がります。
とくに3日のほうはお祭りのピークでスターマインなど連発花火が派手に咲き乱れます。
【1~3月】冬の下呂温泉 花火物語
時期に合わせたテーマで花火を打ち上げるのが、岐阜県下呂温泉の花火物語です。
テーマは成人祝い・バレンタインの恋愛成就・合格祈願・お雛様・卒業祝いとさまざま。
1月から3月にかけて毎週土曜日に開催されます。
若草山焼き
奈良公園の若草山では毎年、山頂の古墳の霊を鎮めるために山焼きが行われます。
で、この山焼きの直前に花火が上げられます。
花火も派手ですが山を焼く様もまた壮観ですよ。
まとめ
★夏に花火をする理由
- お盆の慰霊を兼ねているから
- 夜過ごしやすい季節なので
- 夏に向けて花火制作しやすい
- 冬の花火は危ないので
花火は夏の思い出の1コマを鮮やかに彩ってくれます。
ご先祖様の供養、今の自分が元気でいられるありがたみを考えながら見上げると、また違った思いがこみ上げてくることでしょう。
でも冬の花火もまた違った趣があっていいものですよ。
家庭で花火を楽しむときには必ずバケツを用意して安全を確保しましょうね。