ある世代より上の人には「電子機器に磁石を近づけると壊れる」という根強い思い込みがあります。
かくいう私もその一人。
子供のころに面白がって磁石を家電に近づけて、両親に怒られた記憶があります。
なので、いまだに電子機器と磁石を近づけるのは抵抗があります。
でも今は、磁石に影響を受けない機器のほうが多いんですよね。
間違った知識で不安をかかえたまま生活するのは何かと不便です。
そこで今回は磁石に近づけてはいけないもの・OKなものをまとめました。
これを読めば気兼ねなくマグネットが使えるようになりますよ。
磁石に近づけてはいけないもの
まずは磁力に弱い日常品です。
これらの品はうっかり磁石に近づけないように注意しなければいけません。
クレジットカード
クレジットカードには黒い磁気テープが付いています。
これは言ってみれば薄型の磁石のようなもので、磁気によって情報が記録されています。
そこに別の磁石が近づくとデータに異常が生じて読み取れなくなります。
通帳・キャッシュカード
キャッシュカードにも磁気テープがあるので注意する必要があります。
見落としがちなのが通帳です。
通帳も磁気テープでデータを保存しているものが多いです。
データが破損するとATMで使えなくなりますよ。
カードを磁石にどのくらい近づけると壊れるのかは状況次第です。
普通の磁石ならくっつけるレベルの近さでなければ影響は少ないでしょう。
そんな近距離に磁石はないよと思うかもしれませんが、カバンやスマホケースの留め金にも磁石はあります。
スマホケースにカードを入れている人も多いのでは?
しかも、留め金の磁力はかなり強力です。
マグネット付きのスマホケースにはカードを入れないようにしましょう。
カセットテープ・ビデオテープ
今ではすっかり影が薄くなったテープ式のカセットやビデオ。
でも意外に愛用している人もいますよね。
これらのテープも磁気で記録されています。
磁力の影響で音の歪みや映像の乱れが出てしまいます。
フロッピーディスク
フロッピーディスクも磁気で記録されています。
家庭ではほとんど姿を消しましたが企業の古いデータではまだ存在しますね。
FDも磁石にはめっぽう弱いです。
データが壊れるだけでなくディスクそのものが再利用できなくなることもあります(経験済み)。
ハードディスクはどうなの?
ハードディスク(HDD)も磁気による記録媒体です。
メーカの説明にも磁石近くに置かないよう注意書きがあります。
パソコンに磁石を近づけちゃいけないと言われる理由がコレ。
しかし現実には、よほど強力な磁石でない限りハードディスクが壊れることはないようです。
ハードディスクのプラッタ内のデータに影響するほど強力な磁石は、研究施設や政府機関が、メディアからデータを消すために使っている消磁装置にしか付いていないそうです。
この理屈が本当なのか証明できる知識は私にはありません。
ただ、FDが磁石で壊れた話はよく聞きますが、HDDが磁石で破損した話は聞いたことがありません。
そう考えると日常レベルの磁石では心配する必要はなさそうです。
むしろHDDは衝撃による破損に気をつけたほうがいいです(破損経験あり)。
テレホンカード
懐かしのテレホンカードも磁気で記録されていました。
なにげに現在も販売されています。
コンビニで買えますよ。
また、パチンコ屋で使うパッキーカードも昔は同じ仕組みのカードでしたね。
どちらのカードも磁石でデータが読めなくなる事がありました。
ちなみにテレカは磁気でデータが消えても、カード会社で差額分の新カードと交換してもらえます。
パスネット(取扱中止)
パスネットは2008年まで使われていた鉄道用のプリペイドカード。
SuicaやPASMOより前にあったペラペラのカードです。
これも磁石に弱いカードでした。
いまは取り扱いが終了しています。
ブラウン管テレビ
アナログテレビや旧型パソコンモニターなど、ブラウン管の画面に磁石は厳禁です。
ブラウン管は放射された電子ビームを調整して画面を映し出しています。
磁石を近づけると磁力で電子ビームが歪んで色むらが起こります。
そのまま復活しないこともあります。
昔のテレビでこれやるとメチャメチャ怒られました。
【ハードオフサイエンス】
ブラウン管に磁石を近づけるとその磁力が内部の金属パーツに移って色ムラの元となります( ¯•ω•¯ )ちっちゃいころテレビに磁石をくっつけて怒られましたよね?!ね?!#ハードオフ#ハードオフサイエンス#ダメ絶対#防磁スピーカー画期的#怒られるやつ#インスタ映え pic.twitter.com/BSJuS2m9EB
— ハードオフ八王子大和田店【公式】 (@hoowada2788) 2019年2月16日
アナログ時計
実は時計も磁石の影響を受ける製品です。
壊れるというよりは時刻が狂うケースが多いですね。
時計の駆動方式によって磁気で出る症状は異なります。
アナログクオーツ時計:止まる・針がぐるぐる回る
スプリングドライブ:遅れる・進む
機械式時計:遅れる・進む
デジタルクオーツ時計:影響なし
参考 SEIKO「磁気の影響」
クオーツ時計とは電池で動く時計のことです。
つまり電池式のデジタル時計は磁石に近くても問題ありません。
クオーツでもアナログ針で示す時計、ゼンマイで動く高級時計は磁石でおかしくなる可能性があります。
目覚まし時計が近くのスピーカーの磁力でずれた、なんて話はよく聞きます。
ペースメーカー
ペースメーカーは磁石で動作をコントロールしているものが多いので、別の磁石を近づけるのは厳禁です。
誤作動を起こす可能性があり危険です。
植え込み部分に磁石が触れたり胸ポケットにマグネットを入れないよう気をつけましょう。
方位磁石
方位磁石は磁力で方角を示します。
名前の通り磁石でできているので、磁石を近づけると影響をモロに受けてしまいます。
瞬間的に方角がおかしくなる事もあれば、そのまま正確な方位に戻らないこともあります。
作りが雑な安物ほど狂いやすいです。
狂った方位磁石は北と南がきっちり逆になります。
針の上を一直線に磁石でなぞると元に戻すことができます。
磁石に近づけてもいいもの
さてここからは、磁石に近づけるとヤバそうで実は大丈夫な物を紹介します。
私も結構勘違いしているものがありましたよ。
スマホ
なんとなく磁石に弱そうなイメージが有るスマホですが、実際は近づけても問題はありません。
開閉式のスマホケースで電源をオン・オフできるのがその証拠です。
パタンと閉めるだけで電源が切れる商品。
あれはケースに内蔵されている磁石をスマホが読み取って動作しています。
つまり閉じている間はずっとスマホに磁石が密着しているわけです。
公式でそのような機能があるので磁石に耐性があるのは当然です。
超強力な磁力を当てれば中の精密機器に以上が出るかもしれませんが、私たちが手にできる磁石程度で影響が出ることはまずありません。
乾電池
乾電池は、中の亜鉛板と電解質の化学反応で電子の流れを作って電流を生み出しています。
この原理に磁力は影響しないので磁石を近づけても大丈夫。
電池の減りが早まったりすることもないですよ。
Suica
Suica・PASMO・ICOCAのような交通系カードに磁気テープは使われていません。
非接触型ICチップが中に埋め込まれています。
このチップは磁力の影響をほとんど受けないので、磁石を気にする必要はありません。
その他の非接触型ICカード
エディやクイックペイのカードもSuicaと同じ非接触型ICカードです。
磁石に触れても問題ありませんよ。
非接触型ICカードのクレジットカードも増えてきました。
もちろんこちらも磁石の影響は受けません。
ですが、非接触型ICカード・磁気テープが両方付いているクレカもまだ多いので要注意です。
磁気カードでないと使えない店がまだあるので、利便性のために残っているんです。
磁石で磁気テープ部分がダメになると、そういうお店では使えなくなってしまいます。
USBメモリ・SDカード
USBメモリやSDカードはフラッシュメモリーに記録されます。
フラッシュメモリーは磁性体を使っていないので、磁石でデータが消える心配はありません。
CD-R・DVD-R・Blu-ray
CDやDVDのような媒体を光学ディスクといいます。
書き込みはレーザーの光で行うので磁石の影響はありません。
MD・MOも大丈夫
以前はよく使われていたMDやMOなどの記録媒体。
手軽に書き換えられて便利なので私も愛用していました。
これはレーザーと磁気を両方使う光磁気ディスクと呼ばれます。
なんだか磁石に弱そうですが、レーザーで高温にならないと磁気データが変化しない仕組みになっています。
そのため磁石の影響はほぼゼロといっていいです。
液晶(テレビ・電卓)
ブラウン管と違って、液晶の画面は磁石を近づけても大丈夫です。
ノートパソコンは折りたたむと、磁力を帯びたHDDに画面が接近しますが問題なし。
昔ながらの電卓液晶も磁石の影響を受けません。
これは私は勘違いしていました。
子供の頃に絶対ダメと教わったような…。
スピーカー
スピーカーはコイルに電気を流して磁石を振動させて音を出します。
なので磁力の影響がないとはいえませんが、よほど強い磁石を内部に入れない限り壊れることは無いでしょう。
むしろ、スピーカーから出る磁気で他の製品に悪影響を与えないことを気にかけたほうが良さそうです。
スピーカーの上に磁気カードやアナログ時計を乗せるのはやめましょう。
冷蔵庫
冷蔵庫の扉にはついマグネットでメモを挟みたくなります。
ただ、内部が電子機器だけに磁力で悪影響が出ないか心配になりますよね。
結果から言うと冷蔵庫に磁石を付けても大丈夫です。
磁石がつく鉄製の扉と電子機器は、磁石の影響が出ない程度に離して作られています。
メーカーのホームページでも磁石を付けてもいいと明記されていることが多いです。
だから冷蔵庫用のマグネットもたくさん販売されているんですね。
ただし、放熱効率が落ちるので冷蔵庫の側面には何も付けないことが推奨されています。
どのくらいの磁石で壊れるの?
磁石に弱い物といってもどの程度で壊れるのかよくわかりません。
さすがに一つ一つ破壊実験をするわけにもいかないですからね。
と思ったら、本当にそんな実験をしている方がいたので紹介しておきます。
こちらのブログの記事。
FD・クレカ・SDカードを強さの違う複数の磁石でこすってデータが消えたか調べています。
意外に丈夫でしたが磁気データはやはり破損しますね。
SDカードがしっかり無事なのも参考になります。
まとめ
★磁石NGなもの
- クレジットカード
- キャッシュカード・通帳
- カセット・ビデオテープ
- テレホンカード
- ブラウン管
- 時計(アナログ)
- ペースメーカー
- 方位磁石
★磁石OKなもの
- スマホ
- 乾電池
- Suicaなど(非接触型ICカード)
- USBメモリ・SDカード
- CD-R・DVD-R・Blu-ray
- 液晶
- スピーカー
- 冷蔵庫
こうしてみると磁石NGなのはアナログ形式の製品がほとんどです。
最新の家電で磁石に気を使う必要はほとんどないでしょう。
時計と古いカード類に注意しておけば十分です。