旅行の予定があるのに台風の予報。
出張先で台風の直撃を受けてしまった。
新幹線のチケットを取ってあると心配なのが運休です。
はたしてちゃんと動くのか動かないのか…。
スケジュールが詰まっているとハラハラさせられますよね。
実際のところ、台風が来ると新幹線はどの程度とまってしまうものなのでしょう?
今回は台風による新幹線運休について解説します。
止まってしまったときの対応策についても説明していますよ。
運休の基準は公にされていない
いきなり言ってしまうと、台風でどのくらいの確率で新幹線が止まるかはわかりません。
あまりにもケース・バイ・ケースだからです。
各鉄道会社は安全のために運行基準にそって運休を決めています。
しかしその基準は公開されていません。
同じ新幹線でも、車体や走っている区間の地盤で耐えられる台風のレベルに違いがあるからです。
しかも、私たちが目にする天気予報の風速や雨量の数値はかなり大雑把なもの。
鉄道会社ではそれよりもかなり緻密に計測しています。
へたに「風速◯m/s以上は運休」と適当な基準を出すとかえって混乱してしまうからです。
また、基準以下の台風でも、
- 何かが飛んできて車体に当たる。
- レール上にトラブルが起こる。
- 別地区の運休でダイヤが乱れて走れない。
というような事態で突発的に運転見合わせになるケースもありえます。
自然による災害は予測も難しいので、基準にとらわれずに柔軟に対応していくことが安全な運航に繋がるのです。
法令はないの?
安全をほこる日本の鉄道だけに法令で運休基準が明確に決められていそうですよね。
新幹線に関する法律は2つあります。
新幹線鉄道における列車運行の安全を妨げる行為の処罰に関する特例法
(新幹線の安全妨害を取り締まるもの)
全国新幹線鉄道整備法
(日本国内に新幹線を整備するためのもの)
どちらの法律も新幹線と天候にまつわる内容は含まれていません。
このくらいの規模の台風だと運休しなければいけない、という具体的な法令はないんです。
台風運休の確率は?(新幹線が止まった実例から)
しかし、まったく目安がないのも困ってしまいますよね。
そこで、実際に新幹線が運休になった例を見てみましょう。
過去の事例から、「これは止まるかも」くらいの予想は立てることができます。
2018年9月30日の台風24号
大型で非常に強い台風で、東海道と山陽新幹線が計画運休されたほか、東京都内では在来線としては異例の台風直撃前の運休が決まりました。
事前に止まることを決める計画運休なので、同クラスの台風が来れば同じような対応をされる可能性は高いです。
- 台風は和歌山県田辺市に上陸し、近畿、東海、甲信、関東、東北地方を通過。
- 40m/sを超える最大瞬間風速が観測された。
- 建物の損壊、停電も各地で発生。
- 東海道・山陽新幹線をはじめ、多くのJR線や私鉄が運休。中でもJR東日本は、台風が来る前に首都圏の在来線の運航を停止する「計画運休」を実施。
- 1時間の降水量については、全国の56地点のアメダスで50mm/h以上だった。
- 積算雨量は広い範囲200mm以上を観測し、多いところでは400mm超だった。
注目は、40m/sオーバーの風速という点。
一昔前の新幹線は、
風速20m/sを超えると速度制限する区間が出はじめて25m/sオーバーでさらなる速度制限or運転見合わせ。
30m/sを超えるとどの区間の新幹線も運休
という基準がありました。
現在は暴風柵が整備されつつあるので必ずしもこの風速で運休するとは限りません。
が、30m/sを超えたらそこそこ止まる、40m/sオーバーなら確実に運休、というのが今でも一応の目安にはなるでしょう。
2019年8月15日の台風10号
2019年のお盆に西日本を縦断した大型で強い勢力の台風です。
特筆するべきはその大きさで、上陸前日の14日までは強風域が半径1000キロという日本列島をまるごと覆ってしまう「超大型」の台風でした。
前日に少し勢力を弱めて大型に変わりましたが、まだまだ巨大なレベル。
新幹線・在来線は各地で計画運休を実施、飛行機も欠航が相次いだのでお盆のUターンラッシュに大きな影響を与えました。
- 山陽新幹線は新大阪-小倉間を終日運休。
- 東海道新幹線は本数を減らして55本が運休。山陽新幹線との直通運転も取りやめ。
- 九州新幹線は本数を減らして運転。
- 在来線も四国・九州を中心に運転見合わせが続出した。
- 徳島市の阿波おどりも16年ぶりの中止に。
19年の台風10号は各地で計画運休が行われました。
計画なので、風速や雨量が(正確には)わからない台風上陸前に運休を決めています。
こうなると「◯m/s以上」のような目安はありません。
ここで注目したいのが、大型で強い勢力の台風という表現です。
台風の表現の決まり
天気予報でよく「大型」とか「強い」という言葉で台風の様子を伝えます。
この言葉は漠然とした表現ではありません。
台風は気象庁によって強さ(風速)と大きさ(強風域)が正確にランク分けされているんです。
★強さの階級分け
階級 最大風速(10分間平均) 表現なし 33m/s以下 強い 33m/s以上 非常に強い 44m/s以上 猛烈な 54m/s以上 ★大きさの階級分け
階級 強風域 大型(大きい) 500km以上 超大型(非常に大きい) 800km以上 ※強風域=風速15m/s以上の半径
※暴風域=風速25m/s以上のエリア
まず強さですが、その台風は新幹線が止まる風速なのかを判断できる数値と言えます。
表現なしのノーマル台風なら新幹線運休の可能性は低いです。
ところが「強い」と表現がつくだけで33m/s以上という運休の可能性があるレベルの風速が起こります。
それ以上の「非常に強い・猛烈な」がつく台風になると、直撃すれば確実に止まると思っていいです。
次に大きさですが、これは台風が路線に直撃する確率の高さになります。
小さければ進路がそれて被害が減る可能性もありますが、大きければ広範囲に渡って影響を及ぼしますからね。
強風域に入っただけでは新幹線が止まるとは限りません。
しかし強風域の範囲が大きいほど内部の暴風域も広くなります。
路線が暴風域に入ると運休の確率は格段にアップします。
自分の乗る予定の新幹線のエリアが暴風域に入るかは逐一チェックしたほうがいいです。
つまり事前の天気予報を見て
大型の台風:運休確率は低い
強い台風:暴風域をチェック
大型の強い台風:高確率で運休
超大型で非常に強い台風:ほぼ確実に運休
という目安が立てられます。
「小笠原近海に大型の強い台風」みたいな予報が出ていたら、台風の予定進路をチェック。
進路上の新幹線に乗る予定なら、予定を前倒ししたり中止したりと対策を取りたいところです。
大雨では運休しないの?
台風といえば強風の他に大雨ももたらします。
風ばかりでなく、雨量によっても新幹線が止まらないか心配ですよね。
ですが、新幹線はコンクリート製の高架走行が多いので雨にはかなり強め。
そのため雨量だけで運休になる可能性は低いです(速度制限になることはある)。
盛土区間の走行が多く比較的雨に弱いと言われる東海道新幹線ですら、区間整備が進んだ今では1時間雨量60mmが運休のラインとなっています。
60mmというと滝のような大雨が1時間続くような状況で、洪水警報や避難勧告が出るレベルです。
そのレベルの雨でようやく東海道新幹線が止まるかも、と心配するくらい。
では、過去の大雨時の新幹線の状況をいくつか見てみましょう。
2019年7月22日 静岡・愛知の大雨
22日午後8時50分ごろ、東海道新幹線は、掛川(静岡県掛川市)―浜松間の雨量計が規制値を超えたため、同区間の上下線で運転を見合わせた。JR東海によると、その後も同県磐田市など4カ所の雨量計が相次いで規制値を超え、見合わせは東京―新大阪間の上下線に拡大。午後11時15分ごろ、全線で運転を再開した。
運休ではありませんが大雨で一時運転を見合わせたケースです。
この日、静岡県の浜松市では1時間に110mlの猛烈な雨が降って「記録的大雨警報」が出されました。
運休してもおかしくないレベルの大雨でしたが、3時間ほどで運転再開しました。
2019年8月28日 九州北部の大雨
2019年の8月28日に九州北部は記録的な豪雨に見舞われました。
「最大級の警戒をして、命を守る最善の行動をとってください」
と災害レベル5にあたる大雨特別警報が発令されたほどでした。
止まらないことで知られている西鉄バスも運休。
ところが、この観測史上最大の大雨でも九州新幹線は運休しませんでした。
九州大雨でJR、西鉄など運休 九州新幹線は運行 https://t.co/m3LiydCMtq
— 読進社 (@dokusinsha) 2019年8月28日
あんな状況なのに九州新幹線動いてるのか( ゚д゚)
— [DT][OE]みつひろ@宮野真守横浜 (@32uhiro) 2019年8月28日
この事例を見てもいかに新幹線が雨に強いのかが分かります。
雨だけで運休することはよほどのことがない限りなさそうです。
運休を早く知る方法は?
新幹線の運行状況は各鉄道会社のホームページで随時掲載されています。
運休を知るにはここをチェックするのが一番確実です。
ただ運休が決まってからホームページに載るまでは若干のタイムラグがあります。
最速で運休情報を知るには公式ツイッターをチェックするほうが早いです。
一刻も早く運休を知って今後の計画を立てたい、という場合はツイッターのほうに注目してください。
★ホームページへのリンク集
新幹線の運行情報:JR東日本(東北・上越・北陸・山形・秋田新幹線)
★Twitterへのリンク集
JR西日本列車運行情報(新幹線)【公式】(山陽新幹線・北陸新幹線)
新幹線運休時の払い戻し・運転見合わせとの違いは?
まず前提として、新幹線が2時間以上遅れて到着する大幅な遅延では特急料金の全額が払い戻しできます。(運賃・グリーン料金は戻りません)
改札を通ると切符に「遅払証」という文字が印字されるので駅窓口に持っていって払い戻しします。
払い戻しは一年間有効なので、窓口が混雑していたら後日にしても大丈夫です。
★運転見合わせとは?
運転見合わせは新幹線を一時的に止めている状態です。
これから運休になるか遅延ですむかはわかりません。
遅延の場合、2時間以上の遅れなら特急料金が払い戻しされます。
2時間未満の遅れですんだ場合は返金はできません。
運休時の対応
運休はその新幹線が走らないことが確定した状態です。
この場合とれる対応は
- 払い戻し
- 後続列車への振替
- 出発駅へ戻る
などが考えられます。
★乗らない部分は全額返金
目的地に新幹線で行くことを諦めて不要になったチケットは全額を返金してもらうことができます。
とりあえず動いているところまでは移動するケースだと、乗らない部分の金額だけ返してもらえます。
★後続の列車への振替もできる
予定を遅らせてもいいから目的地まで乗りたいという場合には、その後に動く列車に振替も可能です。
遅延で乗る予定だった新幹線の乗車に間に合わなかった場合も、後続の列車に振替できます。
★出発駅へ無料で戻ることもできる
新幹線に乗っている途中で雨風がどんどんひどくなり、とある地点から先は運休ということがあります。
こんなケースでは出発した駅へ戻ってもOK。
この場合も全額返金をしてもらえます。
★ネット予約の分は自動キャンセル
ネット予約していた新幹線が運休になると、自動的にキャンセルになります。
特にこちらで何かする必要はありません。
運休時に手続きの面倒がないのはネット予約の大きなメリットです。
運休や遅延の状況はさまざまです。
鉄道会社の取る対応も臨機応変に変わります。
自己判断で動くとあとで返金できないことも…。
その都度、駅員さんに確認して対応を決めてくださいね。
まとめ
- 新幹線の運休の明確な基準は公にされていない。
- 目安は風速30m/s以上、時雨量60mm。
- 風速40m/s以上ならほぼ運休。
- 「大型で強い」以上の台風は運休確率アップ。
- 運行情報はTwitterが最速。
- 運休時は返金・振替・出発駅へ戻ることが可能。
残念ながら台風で新幹線が◯%運休するとは断言できません。
ひとまずは台風が落ち着くように祈りながら情報収集をしていきましょう。
状況に応じて対応策がアナウンスされるので、指示に従って行動してください。