心付けは古くから日本で伝わる習わし。
お世話になった方への感謝の心をお金に変えて渡します。
ところで、心付けの表書きでは『寸志』という言葉をよく目にします。
自分で出すときにもつい使いたくなりますが、本当に使っていいのか迷うこともありますよね?
表書きの寸志を使ってOKな時、ダメな時について解説します。
寸志の意味は?
『寸志』とはお世話になった方へ少しばかりのお金や品物を渡す時に使います。
寸は「ちょっと」という意味なので、正式な御礼というほどの物ではないというニュアンスを含んでいます。
『粗品』のようにへりくだった言い方をしているわけですね。
心付け表書きの一つとしても使われます。
★寸志は目上から限定の表書き
『寸志』はどんな場面でも使える表書きではありません。
目上から目下へ贈る時に限られます。
上司から部下へ渡すのはOKですが、部下から上司へ渡すのは失礼に当たります。
部下からお世話になった上司へ渡すなら、表書きは『お礼』や『謝礼』を使いましょう。
寸志を使うのはふさわしくありません。
寸志の封筒は?
赤のライン入りのお祝いのし袋、または蝶結びの水引封筒に『寸志』と書きます。
結び切り(固結びの水引)の封筒は「一度きりしかあげないよ」という意味になるので使ってはいけません。
ただ、かしこまったご祝儀とは違うので白封筒を使ってもいいと思います。
入れる金額と渡す相手次第でイヤミにならないよう使い分けてください。
お金でなく品物で渡すときには寸志と書かれた熨斗紙を使います。
こんなときには『寸志』でいいの?
「目上から」とか「心ばかりの」と言われても、どんな時に使っていいのかいまいちピンときませんよね。
寸志を使っていい場面を実例で紹介します。
葬儀
★葬儀屋さん・運転手・石屋
葬儀の時には、担当の葬儀屋さんや霊柩車の運転手さんなどに心付けを渡す場面があると思います。
また、納骨時には手伝いに来てくれた石屋さんに渡す習慣もありますね。
このような心付けの表書きは『寸志』を使って大丈夫です。
偉そうでなんかイヤだなと感じるなら、弔事全般に使用可能な『志』を使えば間違いありません。
★受付やお手伝いの御礼
葬儀ではご近所の方に受付対応をお願いするケースが多いです。
お手伝いをしてくれた方への御礼として『寸志』はふさわしくありません。
必ず『志』や『御礼』を使いましょう。
結婚式
★式場スタッフ・媒酌人
結婚式も多くのスタッフがいるので、心付けを渡す場面が少なくありません。
この場で寸志を使うのは間違ってはいません。
しかし、せっかくのおめでたい席なので『寿』という表書きを使うのがおすすめです。
なお、媒酌人は目上なのでお礼として寸志を使うのは絶対NGです。
『寿』か『御礼』を使いましょう。
★受付・二次会を手伝ってくれた友人
結婚式では友人にいろいろ手伝いをお願いすることがありますね。
協力してくれた友人にはしっかりお礼をするべきでしょう。
友達なら『寸志』を使ってもぎりぎり許されそうな気もします。
ですが、無理に使う必要は全く無いので『御礼』と書くのが無難ですよね。
旅館・ホテル
旅館やホテルの担当スタッフさんに、心付けを渡す時はどう表書きをしたらいいでしょう?
これは市販のポチ袋に入れたお金を何も書かずに渡して構いません。
もちろん寸志と書いても間違いではありません。
ただ、現金を裸で渡すのだけは避けたほうがいいですね。
ビジネスシーン
ビジネスの世界では上下関係がハッキリしているので『寸志』を使える場面もわかりやすいです。
★上司から会費の足しに
忘年会新年会や歓送迎会などで、上司の立場から会費とは別に幹事にお金を渡すことがあります。
これは『寸志』として出すのが一番ふさわしいですね。
招待客の立場で会費を受け取ってもらえない場合でも、『寸志』として渡すと受け取ってもらいやすくなります。
幹事役の人は寸志を受け取ったら、会の始まりにみんなへ報告します。
「○○様からお志(おこころざし)をいただきました。ありがとうございます」
貰った側から「寸志」と言っては失礼になります。
御志(おこころざし)・ご厚志(こうし)・ご芳志(ほうし)という敬う表現に言い換えます。
★ボーナスの代わりに
会社から社員へ、ボーナスの代わりに『寸志』が支給されることもあります。
ボーナスを出せるほど業績がよくないけど気持ちだけというやつですね。
新入社員やパートなど、ボーナスを受け取る立場にない人に支給する時にも使われます。
まとめ
★寸志OK
上司から部下へ
会社から社員へ
葬儀関連の心付け
旅館スタッフへの心付け
★寸志NG
部下から上司
冠婚葬祭の手伝いお礼
結婚式関連(寿を使うほうがいい)
友達へ(御礼を使うほうがいい)
こうして整理してみると、『寸志』をどうしても使わなければいけない場面はほとんどありませんね。
なんとなく表書きに使いたくなりますが、できれば他の言葉に置き換えて乗り切ったほうがトラブルは避けられそうです。